右目のカラコン
吉川 理緒那(高2 千葉県)
私、恋をしていたの。
甘い声、煌めく音。
たまに見せる八重歯に、コロッとやられた。
あの頃聞いた貴方の歌を、一途に信じた貴方の言葉を、この耳はよく覚えてる。
鮮烈な衝撃で、簡単にデイショウへ。
貴方になら私、醜いセキを晒しても、照れ笑いで生きていけたの。
盲目だなんてやめてよね。私はただ、無いものねだりの一等星。
これが依存と名付けられたのは、つい最近の話。
一人芝居をしていたの。マリオネットになって遊んでいた。
それに気付かない私は、多分私を愛せていなかった。
「好きなものがある自分」が好きでも、幸せじゃないの。
「唯一の片思い」があっても、幸せじゃなかったの。
だけどもう、さよならできる。
夢想だった貴方との物語に鍵を(パスワードはどうぞ忘れてね)。
無知だった彼女に別れのキスを(エンドロールで会いましょう)。
「果てない悪路」に喧嘩を売れる私が好きよ。
「満たない心」と向き合う勇気に触れる私が好き。
体内に響き渡るは、選び抜かれたパーティチューンと、遊び歩く一人分のステップ。
エスカレーターの鏡に映る紅い頬が、小っ恥ずかしくてニヤけちゃう。
甘い香水、煌めくイヤリング。
前髪から覗く猫目に、どうか、恋をしてね。