こまき視覚障がい者の会 主催による『暗闇のアート展』 にて鑑賞者の補助者を、文芸ライティングコースの学生らが務めました。
また、講師 村田の 視覚障害を持つ方の絵画鑑賞への提案作品と、名古屋芸術大学の 大学院工芸研究、同時代研究の院生 3名らが参加型の作品を発表しました。
また、村田は ワークショップ形式の詩の朗読も行いました。
展示作品
鑑賞者自身に、感覚を意識させる作品4点。
『Prompt to Poem』
キャンパスに油彩(53×65cm)
村田 仁(文芸・ライティングコース 教員)
鑑賞者に向けて、補助者より 絵についてが語られます。
『遊び』
立体迷路盤、ガラス玉
邢 宇銘 (同時代表現研究)
鑑賞者二人が対になり立体迷路盤を傾かせて 二つのガラス玉 を動かします。迷路盤の真ん中に部屋があり、そこで会える かを探ります。
『シェイクハンドキラー』
立体作品
池田考作 (工芸制作研究)
鑑賞者は立体作品を触ることができます。
『心のかたち』
粘土
周 維清 (工芸制作研究)
鑑賞者自身が 粘土で「お気に入りのものや人物」を作ります。 暗闇の空間の外にそれを持ち出し、外にある展示台に並べて ください。後日、この粘土は焼成され作品となります。
報告文
こまき視覚障がい者の会 主催による『暗闇のアート展』に 名古屋芸術大学 文芸・ライティングコース、同大学 大学院 工芸制作研究、同時代表現の有志が展示参加した。
この展覧会ではギャラリーの照明は落とされ、来場者はアイマスクを着けて入場する。晴眼者も視覚障がい者と皆 平等になる。歩行を補助する者も付き添う。
鑑賞者の歩行付き添いには、市民ボランティアと共に、名古屋芸術大学 文芸・ライティングコースの学生が参加した。
このような条件のなかで、名古屋芸術大学の4名は それぞれ体験型の作品を展示した。
村田 仁の『Prompt to Poem』では 油絵を前に、作者による語りとしての 詩の朗読を聴く。視覚障がい者の絵画鑑賞は 絵の解説を語る方法など 様々に試されているが、絵の情報を理解することと、色と形を感じることは異なる。感じるための言葉は、詩であろうと村田は言う。言葉による指示から絵を生成する 昨今の AI 絵のあり方と絡めて、絵と言葉の関係を考えさせる。油絵は乾いておらず額装されず展示してあり、独特の臭いを放つ。絵画作品が物体であることが強調される。
邢 宇銘による『遊び』は、迷路のテーブルを二人で動かし、二つのビー玉を 迷路の真ん中にあるゴールの部屋へ導くゲーム作品。ビー玉が転がる音や壁にぶつかる音などの感覚を頼りに課題に遊ぶ。片方が進むように迷路を傾けると 片方は引っ張られてしまうので、うまく持たせたり、互いがうまくいく進ませ方をしなければいけない。二人の意志が通じなければクリアできない。ここで 対話が困難であることを、遊びながら体感する。
鑑賞する前の情報としては、立体作品ということだけだと制御されていた池田考作の作品『シェイクハンドキラー』では、まず 鑑賞者が立方体を撫でていく。そこにはいくつかの右手のグローブが手前に突き出ている。その中の1つは 人の手であり、触れると握り返してくる。ドッキリカメラかイタズラのようにも思えるが、これは池田が幼少期に通っていた英語の教室で行われていたレクリレーションを始めるときのアイスブレイクタイムから来ている。タイトルどおり『シェイクハンドキラー（握手する殺人鬼？）』と呼ばれていたという。他者との結びつきを求めるアクションだ。
4作品の最後に鑑賞を案内されるのは、周 維清の『心のかたち』。この作品では、一塊の粘土が渡され、自身の大切なものをつくるようにと注文される。指先の感触を頼りに粘土をこねて、ギャラリーの外にある展示台へ運ぶ。アイマスクを外し、自身が作った粘土の形に名前をつける。粘土作品と名札のキャプションは展示されていく。これらの作品は、後に 周が窯で焼きあげる予定だという。
鑑賞者は、自らのかたちを確かめ、自然と安堵する。
『暗闇のアート』展は、この企画展示以外にも、時間を変えて 市民団体による朗読劇や、紙芝居なども行われた。村田による詩のワークショップでは『晴眼者の逆』という詩の輪唱朗読も展開された。
このような多くの取り組みにより、視覚障がい者と晴眼者が同じ社会で生きていくことを考える場が促された。
文・村田 仁（名古屋芸術大学 文芸・ライティングコース担当教員）
日時: 2023年11月4日（土）
会場: 小牧市中央図書館1F イベントスペース
協力: 声のボランティア「かっこう」/ 浜崎ゆう子 / 宮下由美子 /
名古屋芸術大学 文芸・ライティングコース
主催 / 問い合わせ:こまき視覚障がい者の会
後援: 小牧市